僕には人生の恩師、師匠がふたりいます。
ひとりは大学を出て初めて勤めた会社の専務。
もうひとりは僕にファシリテーションという概念を教えてくれたコンサルタント。
このふたりに出会えなかったら今の自分はありませんでした。
今回は師匠からもらい、今の自分に繋がっている価値観の話です。
人生が変わるほどの出逢い、ありますか。
恩師との出会い
ひとり目の恩師、最初に勤めた会社の専務の話。
新卒入社した僕が初めて専務と会話したのは現場から本社に登用された入社2年目。
地元大手銀行の支店長を歴任されてきた専務は年齢や社歴に関係なく、誰にでもフラットに丁寧に接する、まさに紳士。その人間力から社内での人望も厚い方でした。
若くて勢いしかなかった当時の僕を時折飲みに連れて行ってくれ、仕事人として大切にすべきことを、いつもわかりやすく教えてくれました。
●過去の自分を毎年超え続ける
●誰もやりたがらない仕事を率先してやる
●2分以内に終わるタスクを優先する
●小さな約束を守らない奴に大きな仕事は任せない
●不満や愚痴は持っていい、ただし口に出す時は対案もつけろ
まだまだあります。
これらすべてが今の僕の仕事スタンスに繋がっています。
命を懸けて伝えてくれた想い
1社目で仕事に全てを懸けていた僕は飛び級飛び級で昇格し、20代半ばで部門トップへ。管理部側としてはスピード出世でした。
新卒で入り、他の会社を知らなかった僕はこのことで無意識のうちに調子に乗り、ある大変な事件を起こしてしまいます。
会社の事業拡大に伴い、当時広告部門を担当していた僕はひとりでは仕事が回らなくなり、初めて男性の部下をもらいました。
彼は腰痛を理由に現場では働きにくくなったため、僕の部門に回されたので特に広告の知識も興味もあるわけではなく。
何十日も休まず働き、部門を一からつくってきた当時の僕にとって彼は正直意識もヌルく、物足りませんでした。
マネジメントという概念もよくわかっていなかった僕は彼をただただ毎日叱責するばかり。
今思えば、典型的なブラック上司だったと思います。
ある日、僕が数十日ぶりに連休を取ることになった際、社長から直接部下の彼にとあるデータをまとめて報告するよう指示がありました。
普段からいつも僕に叱られていた彼は、休日中の上司に連絡して相談することが出来ず、自分なりに報告書をつくり勝手に社長に出してしまったのです。
当然そのクオリティは低く、社長から僕に怒りの電話が。
そこで初めて事態を知った僕は怒り心頭です。
何故ならこれまで自分がコツコツ積み上げてきた自部門の信頼が一瞬で失われたと感じたから。
その怒りから、会社に着くなり社長と一緒になって彼をこれまでに無いほど激しく叱責してしまいました。
数ヶ月後、
彼はメンタルを崩し、退職することに。
彼が退職した日。
専務室から内線が。
「今すぐ、来てくれるか」
聞いたことのない低いトーン。
専務室に入ると、あの紳士的な専務が大声でキレて僕にこう言いました。
「お前、自分が何をしたかわかっているのか。人ひとりの人生を奪ったんだよ。わかるか。人を殺したのと同じなんだよ。」
続けざまに
「今すぐ、彼のご両親に謝ってこい。お前が謝れるまで俺は専務の仕事をしない。それで何か文句を言われたら、お前か、俺か、どちらかクビにしてくれと社長に言うから。」
僕はこのときやっと自分がやってしまった過ちが取り返しのつかない大きなことであると気づきました。
自分の仕事人としての人生を懸け、僕のような若造に、犯した過ちの大きさと猛省を促してくれたのです。
座右の銘
この事件の後、僕の部下へのマネジメントは大きく変わりました。
●ミスに対して怒るのではなく、原因を追求し改善させる。
●目指すべきゴールを予め共有し、プロセスは任せる。
●失敗しないように答えを教えるのではなく、小さな失敗ならあえて経験させる。
そしてもうひとつ大切なこと。
恩師からもらった座右の銘があります。
我以外皆我師也
宮本武蔵で有名な吉川英治さんの言葉。
自分以外の人はすべて自分の先生と思え。
どんなに嫌な人だったとしても、反面教師として学ぶべき点があるということ。
今、僕の周りには一回り以上歳下の先生たちがたくさんいます。
ブログの先生、ことばの先生、SNSの先生、仮想通貨の先生など。
年齢に関係なく、自分にないものを持っている人たちを尊敬し、仲間として一緒に価値を創れるようになれたのは恩師のおかげです。
出逢いの連鎖が人を創る。
最大の学びは自身の経験から生まれる。
師匠から頂いた恩を繋ぐ為にも、僕も後輩たちに何かを伝えられるような大人にならないとな、と今も日々精進しています。
あなたには、
人生が変わるほどの出逢いはありますか。
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※本ストーリーは筆者の20代の経験をもとに、設定等を一部変更したほぼノンフィクションです。
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